気がつけば11月も半ばとなり2025年も1ヶ月半となりました。
あっという間に年末を迎え2026年がスタートしてしまうような気がします。
さて…
11月12日(水)から14日(金)まで所管事務調査に行ってまいりました。
環境都市常任委員会へと所属が変わり初めての所管事務調査となります。
岡山市「“アメとムチ”で挑む空き家対策」
1.岡山市の基本情報
岡山市は岡山県の南東部に位置する県庁所在地。
中国・四国地方における交通の要衝としての機能を有しています 。
平成21年(2009年)に政令指定都市へ移行。
人口は約72万人、市域面積は789.95平方キロメートルと広大です 。
この広大な市域は、明治期の市制施行以来、周辺市町村との13回にわたる合併・編入(直近では平成19年の建部町・瀬戸町との合併)を経て形成されました 。
令和6年度の一般会計当初予算は約3,788億円であり、政令指定都市として広範な行政サービスを担っています。
2.「空き家対策」について
「空き家問題」は、全国どの自治体も抱える深刻な課題ですが、岡山市は際だって深刻な「危機的状況」でした。
平成25年の調査では、空き家率が15.7%に達し 、これは全国平均(13.5%)や政令指定都市の平均(12.9%)を大きく上回る、政令市ワースト2位の数字だったとのこと 。
この危機的状況に対し、岡山市は国が「空家等対策特措法」を施行したことを契機に市独自の条例を制定しました 。
危険な空き家への対応(=ムチ)と空き家を増やさないための「支援」と「予防」(=アメ)がポイントです。
岡山市の「アメとムチ」
- ムチ(リスク管理)
管理不全で危険な空き家に対し、指導や勧告、応急措置を行うものです 。外壁が倒壊した事案などで、市が応急措置(ネット設置など)を行った実績があります 。 - アメ(財政支援)
岡山市は「空き家適正管理促進モデル事業」として、危険な空き家の「除却(解体)」や、利活用のための「リフォーム(改修)」費用の一部を補助する制度を設けています 。 所有者が「解体したくても費用がない」うちに放置され、いよいよ倒壊寸前になってから行政が強制的に解体(行政代執行)すると、その費用は最終的に税金で賄うことになりかねません 。 岡山市の補助金は、所有者が自力で対処できるうちに「アメ」を提供し、自主的な解体・改修を促すことで、将来のより大きな行政コスト(税負担)を防ぐ「予防的投資」として機能しています。 - 発生の抑制(予防) さらに岡山市は「空き家を生まないプロジェクト」 と銘打ち、相続や税制に関する市民セミナーを開催するなど、「新たな空き家を生まない」ための根本的な啓発活動にも力を入れています 。
本市でも「空家等の適正管理に関する条例」 を施行し、危険な空き家への対応(ムチ)は始まっています。
しかし、岡山市の事例 が示すように、所有者不明や経済的困窮といったケースでは、指導・勧告だけでは限界も。
対応する職員も少数では情報の把握を含め対応が難しいこともあるようです。
不動産業者との連携をしながら対策を講ずる必要性がありそうです。
「空き家問題」は、市民の安全確保と、将来の財政負担の軽減という両面から捉えていくことも重要です。
本市においても岡山市のような「アメ」の施策(除却・改修補助金)や「予防」の施策(市民啓発)を検討する必要があるのではないでしょうか。
刈谷市「“最強の公民連携”スマートシティ」
1.刈谷市の基本情報
刈谷市は愛知県の西三河地方に位置し、名古屋市の南東に隣接しています 。
人口は約15万3千人(令和2年時点 )、面積は50.39平方キロメートル です。
令和6年度の一般会計当初予算は約730億円です。
刈谷市の最大の特徴は、トヨタグループ主要6社(株式会社アイシン、株式会社ジェイテクト、株式会社デンソー、トヨタ車体株式会社、株式会社豊田自動織機、トヨタ紡織株式会社)の本社・開発拠点が集積する、日本を代表する工業都市である点です 。

2.「刈谷スマートシティの取組」について
刈谷市のスマートシティ構想は、「愛知県」と「刈谷市」が共同で、地域の「強み」を最大限に活かすために設置した「刈谷スマートシティ研究会」 から始まりました。
トヨタグループ6社、JR東海や名古屋鉄道といった鉄道事業者、NTTなどの通信事業者、そして地域の中核病院である刈谷豊田総合病院 など、地域の産業・インフラ・医療・行政が一体となった、強力な「産官・医・インフラ」連携チームです。
「行政の効率化」の先にある「地域課題の解決」
このチームが目指しているのは、単なる「行政手続きのデジタル化」に留まりません。
「5Gを活用した救急医療の実証実験」、「MaaS(交通の最適化)」、そして「EV(電気自動車)を活用した災害時の避難所への電力供給」 など、地域社会の大きな課題そのものを、最先端技術で解決しようとするものです。
構想だけでなく、すでに実証実験フェーズにも入っています。
例えば、AIカメラを使ってバスの乗降客数を正確に把握し、運転士の負担を減らしつつ最適なバス路線を検討する実験 や、人気の「刈谷ハイウェイオアシス」の駐車場の混雑状況をリアルタイムで配信する実験 など、市民生活に直結する取り組みが始まっています。
本市は刈谷市のような環境ではありませんがプロジェクトの中身でそのものではなく手法が参考になりそうです。
「はだのICT活用推進計画」 に基づき、RPA(業務自動化)による業務削減や、「スマート窓口(書かない窓口)」 など、「市役所内部のDX(効率化)」を進めているところです。
これが第1段階だと考えると 刈谷市の手法は第2段階を考えるヒントとなりそうです。
市役所の効率化に合わせて秦野市固有の地域課題の解決を図ることが大切だと考えます。
地域の事業者、さまざまな分野に関わる市民団体、各自治会との連携もより充実させることも重要です。
安城市「南明治地区土地活用構想と憩いの場“アンフォーレ”」
1.安城市の基本情報
安城市は愛知県の西三河地方のほぼ中央に位置し 、刈谷市と同様にトヨタ系企業が多く立地する工業都市である一方、かつて「日本デンマーク」と呼ばれた農業先進地としての側面も併せ持つ都市です。
人口は約18万8千人 、面積は86.05平方キロメートル。
令和6年度の一般会計予算は、令和6年11月29日付の補正後で約792億円です 。

2.「南明治地区土地活用構想」 について
JR安城駅の南側に広がる「南明治地区」の再開発について概要を説明いただき街中を視察。
28街区にあたるDENCITYを見上げながら説明もしていただきました。
交差点は珍しく信号ではなくランアバウトになっています。
秦野市の「中心市街地活性化」 、特に「秦野駅北口にぎわい創造」 を考える上でも参考となる先行事例と言えます。
安城市は、JR安城駅の南口にあった「旧市役所・旧公会堂の跡地」 という広大な公有地を、PFI(民間資金活用)の手法 を用いて再開発しました。
これは、秦野市が駅北口の公社有地を含む土地の活用 を計画している状況と非常によく似ています。

成功の鍵は「建物(ハード)」ではなく「運営(ソフト)」
安城市では「南明治地区土地活用構想」のもとで複合施設「アンフォーレ」を建設。
今回の視察ではタイミングが合わず、施設見学はできずバスの中から様子をうかがいました。
平日なのにマーケットが開かれていることが印象的です。
アンフォーレは、2020年に「これからの図書館のあり方を示す」施設に贈られる「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2020」で優秀賞・オーディエンス賞を受賞しています。
評価された理由は、豪華な建物(ハード)ではありません。
・司書が考え抜いた独自分類による専門性の高い書架。
・図書館機能に留まらない「ビジネス支援」機能。
・市民の「交流」の場としての機能。
・ICT機器を活用した業務の効率化。
これらの点が高く評価されたとのこと です。
その結果は、来館者数に表れています。
平成29年(2017年)の開館から、コロナ禍(令和2年度) の一時的な落ち込みを除き、多くの市民に愛され、令和7年(2025年)2月には累計来館者数800万人を達成しています。
本市の「中心市街地活性化基本計画」 は、駅北口に「商業・業務の新たな核づくり」 を掲げています。
私たちはつい「どんなビルを建てるか」「どんなテナントを誘致するか」という「ハード」の議論に終始しがちです。
しかし、安城市のアンフォーレの成功 は、「どのようなサービス(ソフト)を実現したいか」をまず定義することが、いかに重要かを示しています。
「アンフォーレ」が示した、「高品質な公共サービス(図書館)+α(ビジネス支援・交流)」というモデルは、秦野駅前の「新たな核」の具体的なイメージの参考になると思います。
本市でも構想されている多世代交流施設でも、こうした運営上の「課題」にもあらかじめ目を向け、設計段階から解決策を盛り込む必要があるのではないでしょうか。
「どのようなハコを作るか」の前に、「どのような運営(サービス)を、誰が、どのように実現するのか」を考える。
アンフォーレの成功と課題の両面から学び、秦野駅前の未来の議論を深められたら幸いです。
視察を終えて
これまでも文教福祉常任委員会、議会運営委員会、二市組合議会等で視察の機会をいただきました。
視察する中心は施設となりますが、その周辺の状況を眺めながら町の様子を知ることが重要だと実感しています。
視察先となる自治体がどのように形成されたのか、歴史的な背景を知ることも重要です。
地方へ行けば行くほど、少子高齢化の波は高く、各自治体の頭を悩ませています。
そこへ各自治体固有の問題が横たわっていることもあり、いろんなことを想像しながら回っています。
いずれ本市でも大きな問題となるであろう分野についてのヒントがある。
視察前の事前調査→現地での視察→視察後の追加調査の流れを大切に、今後も所管事務調査にあたらせていただきます。
関係者の皆様、今回も大変お世話になりました。

