真夏のような気温となった丹沢・大山の麓。
ちょっと動くだけで汗がバーッと噴き出てきます。
朝と夕方は地元を歩き回って暑熱対策。
本格的な夏に向けてカラダも鍛えておきたいところです。
さて…
今日は講師をお招きして生活保護に関する研修会を行いました。
憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護は様々な課題を抱えています。
生活保護における課題
捕捉率の低さ
生活保護を必要とする人のうち、実際に受給できている人の割合(捕捉率)が、研究者の推計で2~3割程度と非常に低いことが指摘されています。これは、諸外国(ドイツ85-90%、イギリス87%など)と比較しても極めて低い水準です。
スティグマ(恥の意識): 生活保護を受給することへの社会的な偏見や、「恥ずかしい」「みっともない」といった意識が根強く、申請をためらう人が多い。
制度の認知不足: 制度の内容が十分に知られていない。
「水際作戦」の横行: 福祉事務所の窓口で、本来受給資格があるにもかかわらず、不適切な説明や対応により申請を妨害される「水際作戦」が問題視されている。
資産活用の要件: 持ち家や車などの資産がある場合、それらを売却・活用することが求められるため、申請に至らないケースがある。
扶養義務の強調: 扶養義務者(親族など)からの援助が優先されるため、申請前に親族への照会が行われ、申請を断念するケースがある。
不正受給への過剰なバッシングと誤解
生活保護制度全体への国民の信頼を確保するため、不正受給への対応は求められるものの、その件数や金額は全体の0.5%程度とごく一部です。にもかかわらず、メディアなどでの一部の不正受給に関する報道が過剰に強調され、生活保護制度全体に対するネガティブなイメージやバッシングにつながっています。
スティグマの助長: 不正受給へのバッシングが、生活保護受給へのためらいやスティグマをさらに強めている。
行政の過度な抑制: 不正受給の防止を過度に重視するあまり、本来保護が必要な人への支援が手薄になったり、水際作戦のような不適切な運用につながったりする。
「辞退届の強要」などの問題: 厳しい就労指導や、不適切な運用により、受給者に辞退届の提出を強要し、保護を廃止させる事例が報告されている。
就労支援の課題
被保護者の中には、稼働能力があるにもかかわらず、就労に至らないケースも存在します。特に「その他世帯」(高齢者や障害者世帯以外)の割合が増加傾向にあり、就労を通じた自立支援が求められています。
能力・条件に見合った就労支援の不足: 受給者のスキルや状況に合わない求人情報の提供や、就労に向けた具体的なサポートが不足している。
「貧困の連鎖」: 親世代が生活保護を受けていた世帯の子どもが、自身も生活保護を受給するケースが見られ、貧困が世代間で連鎖する問題。
就労意欲の減退: 長期的な求職活動や生活保護制度への依存により、就労意欲が低下するケースがある。
労働市場とのミスマッチ: 受給者の希望職種と労働市場のニーズとの間に乖離がある。
医療扶助の適正化
生活保護費の約半分を医療扶助が占めており、高齢者世帯の増加に伴い、医療扶助費も増加傾向にあります。
モラルハザードの懸念: 自己負担がないため、患者や医療機関の双方にモラルハザード(不必要な受診や過剰な医療提供)を引き起こすという意見もある。
不正転売などの問題: 向精神薬の大量入手・不正転売などの不正事件も発生している。
後発医薬品の導入の遅れ: 医療全体と比較して、生活保護受給者における後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用が遅れている。
適正受診指導の強化: 受給者側への適正受診指導に加え、医療機関側への働きかけも強化する必要がある。
福祉事務所・ケースワーカーの体制不足
生活保護申請の増加に対し、それを支援するケースワーカーの人員が不足しており、一人当たりの担当世帯数が増加しています。
十分な家庭訪問や支援時間の不足: 担当世帯数の増加により、個々の被保護者へのきめ細やかな支援や、家庭訪問の時間が十分に確保できない。
ケースワーカーの疲労・ストレス: 業務負担の増加により、ケースワーカー自身の疲労やストレスが増大している。
専門性・研修体制の不足: 生活保護に関する業務は多岐にわたり、他の法律や制度に関する知識も求められるが、研修体制が不十分な場合がある。
異動年限の短さ: 自治体によってはケースワーカーの異動が頻繁で、専門性や経験が蓄積されにくい。
その他の課題
生活保護基準の見直し: 物価上昇などを踏まえた生活保護基準の適正化が課題。
住居の安定: 民間借家に住む高齢者や障害者、非正規労働者など、居住の安定確保が課題。特に、家賃の更新料など、住宅扶助の基準額との乖離も指摘されている。
複合的な課題への対応: 失業だけでなく、疾病、精神的な問題、家族関係、教育、債務など、複数の課題を抱える生活困窮者への包括的な支援体制の構築が求められる。
子どもの貧困: 生活保護世帯の子どもは、一般世帯と比較して高等学校進学率が低いなど、教育格差の問題も存在する。
これらの課題は複雑に絡み合っており、制度の改善、社会的な理解の促進、支援体制の強化など、多角的なアプローチが求められています。
生活保護の利用世帯数と利用者数
厚生労働省が公表している「生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)」の結果によると、令和5年度(令和5年4月~令和6年3月)の生活保護の利用世帯数と利用者数は以下の通りです。
令和5年度(2023年度)の生活保護の利用状況(1か月平均)
被保護実世帯数:1,650,478世帯
前年度から7,015世帯増加(0.4%増)
被保護実人員数:2,020,576人
前年度から4,010人減少(0.2%減)
世帯類型の内訳(1か月平均、保護停止中を含まない)
総数:1,635,604世帯
高齢者世帯:839,753世帯(全体の約51.3%)
母子世帯:66,139世帯(全体の約4.0%)
障害者・傷病者世帯:412,663世帯(全体の約25.2%)
その他の世帯:317,049世帯(全体の約19.4%)
主なポイント
世帯数は増加、人員数は減少傾向にあります。これは、高齢の単身世帯の増加が背景にあると考えられます。
高齢者世帯が全体の半数以上を占めており、高齢化社会の進展が生活保護の受給者数に大きな影響を与えていることが分かります。
保護の申請件数や開始世帯数は増加傾向にあり、経済状況の変化や物価高騰などが影響している可能性があります。
これらの数値は、日本の生活困窮者の状況を示す重要な指標となります。
【出典】厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和5年度確定値)の結果を公表します」
研修を受けて
ますます高齢化社会が進むことを考えると住民同士の顔が見えるまちづくりが大切だと思いました。
認知症を抱える人たちも増え続けることも想定され、支援のあり方を考えなければなりません。
社会情勢の変化や災害などによって生活が激変することもある。
その時に支援する体制は十分でしょうか。
とはいえ、行政に向かって「なんとかしろ!」というだけではいけません。
ここでも自助、共助が必要で、ご近所さん同士の繋がりで情報をいち早く入手し支援に繋げる。
住民自治というコミュニティのあり方を見直す必要がありそうです。
支援窓口となる行政については、縦割り行政からの脱却を目指した提案ができるとよいと感じました。