「豊かさとは何か」(岩波新書)
暉峻淑子さんの著書です。
1989年に初刷され、今では60刷という名著でもあります。
読んでみると「豊かさと何か」ということを現代社会の私たちの生活と重ねて再考することができます。 西ドイツでの生活との比較もありますが、現在のドイツ・オランダあたりの文化と考えて読んでみるといいと思います。
私にとっては、昨夏、オランダへ渡航してきた際に感じた豊かさの源を理解できる本となりました。
ゆったりと流れるアムステルダムの時間、せわしなさを感じさせない街の人々 農村部で感じた自然と調和した景観とくらしぶり…
当たり前だと思っていた日本の豊かさは、まがい物であるということが理解できます。
収入も下がり、仕事に疲れ果て帰宅する親が子どもたちに適切な教育を施すことは困難を極め、結果、学校に教育を委ねるものの、かくいう学校も人員、予算も恵まれているとは言えず…
教材や教具なども自前で用意せざるを得ないこともあるし、先生たちが苦心して何とか頑張っているのが現状です。もはや日本の教育は限界であるといわざるを得ません。
高齢者の福祉も同様の課題を抱えています。
よくよく考えれば年金を払い続けているのに、それでは足りず、貯蓄に走る私たちは何なのでしょう。
貯蓄は金融機関に運用されて、訳のわからない会社に融資されることもあるわけです。 老後の心配がなければ、貯蓄なんてしないで公共財のために使って私たちの生活に恩恵を与えられるはずです。
巨万の富を築いたはずの日本経済ですが、借金だらけの政府。
稼いでいるのに、余計な消費をせざるを得ないような社会、よくよく考えるとおかしなことだらけです。
人間らしい生活とは何なのか、本当の豊かさとは何なのか、もう一度よく考えてみたいと思います。