スポーツマネジメント発の学級チームビルディング(下)【教育新聞連載記事】

学級チームビルディング(下)

教育新聞ウェブサイトより転載

教育新聞にインタビュー記事が連載されています。

【シリーズ 先を生きる】スポーツマネジメント発の学級チームビルディング(上)

ずっとお世話になっていた伊勢原市にある成瀬小学校近くでのインタビュー。

元同僚や教え子たちからも、様々な反応をいただいています(笑)

教育新聞にインタビュー記事が連載されています。 【シリーズ 先を生きる】スポーツマネジメント発の学級チームビルディング(上) ...

上・中・下と続く連載も8月13日配信で最終回です。

今回は、教育新聞掲載文に少し加筆してお届けしようと思います。

残り少ない夏休み、2学期に向けて何かしら参考になれば幸いです。

主体的な学びに向けた脱一斉授業の取り組みの中で、グループワークをさらに進化させた「チーム学習」。学級運営にスポーツマネジメントを応用し、それぞれの児童の個性を生かす“先生が教え過ぎない授業”。元神奈川県公立小学校教諭で、現在は佐久穂町イエナプランスクール設立準備財団理事を務めている桑原昌之氏に、具体的なチームビルディングの手法を聞いた。

異なる個性同士をつなげるビジョン共有

――児童と共につくる学級のゴールは何ですか。
クラスの共通目標は「居心地の良い教室にすること」です。これは大きなテーマのようなものですが、居心地の良さというのも実際は人それぞれですから、チーム全体の目標だけでなく、個人のビジョンも必要になります。

僕は始業式の日に「未来作文」というのを書かせていました。クラスが解散する日の自分自身の気持ちをつづる、未来日記みたいなものです。最後の日に、どんな気分になっていたいか。それが、「居心地の良い教室」という全体テーマの中での個人ビジョンになります。

よく「チーム学校」などのテーマで、学校の目標をそのまま全ての教師の目標としておいてしまうケースを耳にしますが、僕は全体のビジョンに個人が縛られ過ぎないことが大切だと思っています。なぜなら、人それぞれ個性が違うので、目指すことも目指し方もそれぞれで良いと感じるからです。「チーム○○」という一つの目標の旗を大きく振るのではなく、個人個人が自分の目標を持った方がモチベーションも上がりますよね。

――個人のビジョンは全体へも共有するのですか。
もちろん共有します。ビジョンを共有するだけでなく、そのためにどうしたら良いか?ということも考えて共有してもらいます。例えば、クラスが解散する日の気分をイメージして、皆に「使ってほしい言葉」「使ってほしくない言葉」「使いたい言葉」「使いたくない言葉」を出し合います。

ポジティブな言葉やネガティブな言葉を皆がそれぞれ共有すると、その言葉を意識するだけで友達の目標達成のサポートができますよね。個人のビジョンを、みんながそれぞれサポートし合う土壌ができます。

「未来作文」は、初日に書いてもらっていました。

「嘘でもいいから、書いてごらん!これがさ、けっこう当たるんだよねえ。」

なんて言いながら書いてもらいます。

クラスはスタートしたばかりです。

「まずは、個人としてどうありたいか?」をイメージしてもらう。

それから、「クラス全体としてどうする?」という感じで毎日が進んでいきます。

そんなことをしているうちに「共有ビジョン」と「個人のビジョン」が明確になります。

これは、振り返りの指標にもなるので、とても大切だって思っています。

スポーツマネジメントから持ち帰った思考ツール

――言われてうれしいこと、嫌なことが分かっていると、児童同士の対話も弾みそうですね。
そうですね。でも実は個人ビジョンを共有しているだけでは、まだ不十分です。「○○したい」という目的が人それぞれ異なるというのは、それぞれが違う眼鏡で世界を見ているような状態なわけなので、その違う世界同士をつなぐために有効になるのが「思考ツール」と「対話」です。

スポーツマネジメントの学びから得たものですが、僕がよく使っているのは、「事実」「理想」「手だて」という思考ツールです。そこで「何が起きているのか」「理想の姿は」「理想に近づくために何をしたら良いか」ということ。

例えば掃除の時間に、「あいつがいつも箒(ほうき)を取っちゃうんだよ」ということが起こります。児童は自分の主張を訴えて、教員に解決を求めてきますよね。教員が「掃除当番表を作る」などの交通整理をすれば即効性があって良いのですが、ここであえて「そうか。事実報告ありがとう。じゃあ、どうすればいいかな? それを実現させるためにはどうしたら良い?」と児童に考えさせます。

この思考ツールを使って考えてもらうというのは、一度ですぐにできるようになる訳ではないので、根気よく繰り返し、いろいろな場面で活用することが必要になります。この「根気よく継続して」というところが、学級チームビルディングの一番のハードルかもしれません。

思考ツールは、自分たちの頭の中にあることを可視化するのに最適です。

そんなに難しいことはありません。

至ってシンプルで「事実」→「理想」→「手立て」を明らかにして行動を繰り返す。

さらに付け加えれば、理想的な姿に価値を見いだすことも大切です。

頭じゃ分かっているけどやらないのは、価値がイメージできていないからです。

ダイエットできないのも「痩せる価値」が理解されていないからですよね(笑)

理想の姿の先にあるものを、しっかりとイメージできるようにします。

そして、「繰り返す」ってのもポイントです。

プラスαの必須条件は「対話」

共有で効果的な対話が生まれる
――この関わりを続けていくと、児童同士の話し合いもできるようになっていくのですか?
「事実」「理想」「手だて」のフレームワークが、クラス全体の共通の思考ツールとして浸透することに加えて、ポイントとなるのは「対話」です。「事実」も一つじゃない。見る目が変わればアングルが変わり、見えるものも変わりますよね。

児童が伝えてくれる「事実」を、できる限り同じ目線で捉えると同時に、たとえそれが他の児童が伝えてくれる「事実」と異なっていても、それぞれをきちんと受け止めます。「事実」も「目指したい理想」も一つではないという前提で、お互いの主張を共有して、一緒に「理想の姿」を目指すための「手だて」を考えていくには、「対話」が不可欠となります。

自分の「理想」を発信するだけでは、ダメなんですよね。そこには、相手の「思い」をリスペクトする姿勢を持って受け入れることが必要になります。この点は、このインタビューの(上)でもご紹介した、CRS(チャレンジ・リスペクト・スマイル)が浸透されているからこそ生まれるものですね。

自分だけで頑張ろうとすると無理が生じます。

他者から気づかない視点をもらうことって大切です。

パーソナルトレーナーさんとトレーニングに励むのと同じような効果が期待できます。

何よりも自分だけで頑張るより友だちとやった方が楽しいこともあるし解決も早いです。

もちろん、最初から誰かに答えを聞くだけでは成長しませんが…

自分がチャレンジして、チャレンジする他者も応援する。

ボクらはいつまでたっても未熟なので他者の力を借りながら自分の力をつけていく。

そこにはリスペクトが必要です。

自分も相手も尊重する気持ち、応援する気持ちなどなど…

苦しいこともあるし、乗り越えられないような壁にぶち当たることもある。

それでも、最後は笑顔になるのです。

保護者や他の教師の反応

――「チーム学習」に対する保護者や、他の教員の反応はいかがでしたか?
保護者は最初こそ心配されましたが、「完璧な教師ではない」というありのままの僕を開示し、丁寧に対話を重ねたので、アドバイスをいただくなどとても協力的でした。

ちなみに、「事実」「理想」「手だて」のフレームワークは、保護者の皆さんとの個人面談のシーンでも活用していました。おのおのご家庭の目標もそれぞれですから、現在の状態を共有して、どんなゴールを目指すか、そのためにどうしていくか――を個別に話し合っていくのにも、実はこのフレームワークはとても使いやすいのです。

他の教師たちも興味を持ってくれて、サークルベンチのある教室が広がっていきました。何か困ったことがあったら、教師同士で相談しあえるようにもなりました。教室の中だけでなく、職員室でも自分自身をさらけ出してオープンでいられると、気軽に相談しやすくなるので学校の空気がとても良くなります。

変わったことをしていると…

「あの先生、大丈夫?」「成績、落ちるんじゃない?」「受験あるのに…」

なんて心配をかけてしまうことがあります。

まず、ボクが心がけたことは、保護者の皆さんも子どもたちを応援する仲間だということ。

「学校」「家庭」の垣根をできる限りなくすこと。

子どもたちにも、「なぜこのスタイルでやるのか?」を語り続ける。

そして、それは保護者の皆さんに伝染していく。

授業参観でも、どんどん席の間に入ってもらう。

我が子だけじゃなく、他の子どもたちの学びのスタイルを見て参考にしてもらう。

そんなことをしているうちに保護者の皆さんから様々なアドバイスをもらえます。

笑顔で過ごせる空間に

――「居心地のよい学級づくり」を目指す教師へのメッセージは。
皆さんきっと、それぞれの「理想の教師像」をお持ちで、日々頑張っていらっしゃると思います。まずは、その現在の皆さん自身を自分で褒めてあげてください。教師は教師になるまでにすごくいろいろ勉強してきているわけだし、教師というだけである程度すごいことです。

そんな現在の自分自身を認めてあげた上で、「教師としての自分」と「本当の自分」がどれくらいフィットしているのか、自分自身を見つめてみるのもおすすめです。もしあまりフィットしていない場合は、「本当の自分」をもっともっと教室で出していっても良いかもしれませんね。

皆さんそれぞれの「強み」をお持ちでしょうから、それをうまく教室でも生かしていこうよ――という発想です。「強みなんてない」と謙遜される方がいるかもしれませんが、やっていて楽しいことや心地よいことはありませんか。その「心地よいこと」を教室で生かしていければ、教室は皆さんにとって安心できる場所になりませんか?

学級のチームビルディングは、「居心地の良い教室作り」にとても有効です。教師も児童も本当の自分自身をさらけ出して自然体で過ごすことができれば、教室はきっと、皆が安心してチャレンジでき、笑顔で過ごせる空間になりますよ。

(森田亜矢子)

人は誰でも、何かしらの役を演じたくなるものだと思います。

ボクの場合、テレビドラマに出てくるようなカリスマ教師を目指す時代がありました。

でも、何だか気持ち悪い感じがしてきた。

そりゃそうですよね。本当の自分じゃないのですから。

「教師としての自分」と「本当の自分」が見事に乖離していた頃もあったのです。

ガードレールを左折なのに右折して出勤できなくなった苦い記憶も…

何だか分からないけど学校に行かれない。

次の日も、また次の日も右折して気がついたら海を眺めていた30代があったのです。

「自分の強み」は何ですか?

「強みなんてありません!」

「じゃあ、学校とは関係なく、好きなことや得意なことは何ですか?」

「あ、それならあります。」

「好きなことや得意なことに触れていると心地良いですよね。」

「はい、楽しいです。」

「それを学校で生かす方法を考えてみませんか?」

「え?いいんですか?」

「そもそも、子どもたちは、先生である前のあなた自身に触れたいのではありませんか?」

「・・・」

「だから、ある意味で教師になろうとしちゃいけないんです。」

「???」

「○年○組、○○先生ではなく、○○○○(本名)そのもので気楽に接したらどうかな。」

こういった感覚が、「居心地のよい教室」への第一歩です。

【教育新聞】https://www.kyobun.co.jp/

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今後もより一層精進いたします。